貝島は地方大手中の最有力者であったので,貝島の経営史は,石炭産業史の研究にとっても地方財閥の研究にとっても,ともに重要な位置を占めているが,この貝島の経営史において。貝島家〝家憲"はとりわけ特別の意義を有してきたと考えられる.
本稿では、今回新たに見る機会をえた貝島家史料を利用して、井上馨が貝島家の家政および事業経営にどのように関与していたかを紹介し、ついで井上が貝島家を支援した理由と,同家が彼の指示・監督を受け容れた理由を若干検討することにしたい。